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2013年5月26日 (日)

1年4ヶ月にわたる児の闘病生活と母乳育児。

Nさんは1人目さんの時はおっぱいへの拘りはさほどなく、退院時は完母だったものの、1ヶ月健診時には混合栄養で育てておられる状態でした。
3年後に出産された2人目さんの時、生後間もなく発覚した病気のため、手術が出来る病院に赤ちゃんは搬送されて母子分離となりました。
手術は成功したものの、予後は手放しで喜べるような状態でもなく、数ヶ月の入院が必要な状態でした。

Nさんの自宅からその病院までは片道2時間半を要する距離でしたので、赤ちゃんの面会は週末に、日帰りもしくは1泊で面会時間中のみという状態でした。
距離的・時間的にも気軽に面会できない母子分離の状態でした。
私が最初に出会った時のNさんは、産後10日目頃でしたが、心労のためげっそりと面やつれされ、いつも泣いているのかな?という感じでした。

初めての面会の時はNICUの物々しさに圧倒され、看護師から「お母さん、保育器の窓から手を入れて、赤ちゃんの手を握ってあげてくださいね。」と声掛けされたものの、元気な体で産んであげられなかった申し訳なさで胸がいっぱいになったこと、触ったら心臓が止まるんじゃないかと思い、怖くてなかなか手が入れられなかったこと、本当にこの子を家に連れて帰ることが出来る日が来るのか?という想いで、涙が止まらなくなってしまったことなどをぽつりぽつりと話してくれました。

お母さんは1人目さんの時には1度もしたことが無い搾乳を、赤ちゃんのためにしておられましたが、1人目さんの時の記憶からか母乳不足感もあり、また、分泌の維持が出来るのか?ということに強い不安を感じておられました。
でも、「色々考えたのですが、私に出来ることはおっぱいを持って会いに行くことだけなんです。どうしてもおっぱいが出続けてほしいんです。どうしたらいいですか?」と聞いてこられました。
私にはNさんの必死な表情から強い決意を感じ、何とか力になりたいと思いました。
そこで搾乳の量や回数やお食事・水分摂取等を事細かに打ち合わせして、分泌がどんどん低下するような傾向がみられたら、早急に電話連絡して、母乳外来を受診されるようにとお話ししました。

赤ちゃんは搬送時を含め数ヶ月のの入院と2回の手術をされました。
絶飲⇒鼻注⇒瓶哺乳⇒直母という変遷を2回も繰り返すことになりました。
普通なら乳頭混乱を起こしかねないシビアな条件でした。
しかし幸いにもそれは起きませんでした。
しかも、入院中冷凍母乳が不足する事態は1度も無く、自宅療養中も1度もミルクを補足することも無く、1歳4ヶ月の自然卒乳の日までNさんはおっぱいの分泌を維持され、完母でいけました。

何度か母乳外来を受診され、危機回避が必要な局面に差し掛かりましたが、搬送先の看護師さんからも「週1回しか面会に来られない条件なのに、こんなに長く入院したのに、おっぱいが途中で枯れないなんて奇跡的だね、凄い努力をしたんだね。」と驚かれたそうです。
Nさん自身も「私は1人目混合栄養だったけど、2人目はあんな状況だったのに完母でいけて、今ではよくやったなぁって自分でも驚いているんです。」
そして、「私がここまで続けられたのは上の子のお蔭です。この1年4ヶ月、何処にも遊びに連れて行ってあげられなかったし、退院してからも赤ちゃんを泣かせては心臓にに負担がかかるのではないかと怖くて、上の子をまともに抱っこもしてあげられなかったんです。なのに甘えてくることもなくて。子どもなりに寂しくても辛抱してくれていたんだと思うんです。」と仰いました。

搬送先の看護師さんの仰るようにNさんの母乳育児はとても偉大で、奇跡なのかもしれません。
でも、周囲の協力やお母さんの意思や努力や赤ちゃんの頑張りや諸々の条件が好転すれば、Nさんのような奇跡は、何処(=いずこ)でも起こせるのではないか?と、私は思うのでした。

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