乳頸部亀裂に対する創部被覆材の活用について。
産科入院中の段階であっても、アトピー性皮膚炎のお母さんの場合、乳頸部に亀裂が入ってしまう場合があります。
アトピー性皮膚炎ではないお母さんの場合は、産科入院中は乳頸部に亀裂が入ることは頻度的に少なく、万一亀裂が入っても、過去記事にあるように凍らせた“乳首リング”を直母前に3分間装着していただければ、吸啜時の痛みを緩和しつつ徐々に亀裂が軽快していくのを待つことが出来ます。
もちろん口内炎治療薬の「デスパコーワ®」を塗布されても良いかと思います。
ただ、アトピー性皮膚炎のお母さんで、産科入院中の「超」頻回直母中であると、、「デスパコーワ®」を塗布してラップしていこうにも、塗り剥がし状態なので効果が出にくいことが経験されます。
もちろん凍らせた“乳首リング”を毎回装着されてもいいのですが、亀裂の回復がアトピー性皮膚炎ではない方よりも遅いことが想定されます。
そこで、喫緊の吸啜時の痛みを緩和するために何か良い方法が無いか?と、考えていましたところ、創部被覆材の活用することを閃きました。
ポリウレタンフィルム・ドレッシング材を亀裂部に貼付するのです。
看護師さんや介護士さんだったらどなたもご存知かとは思いますが、商品名で言えば、「テガダーム®」「オブサイト®」「バイオクル―シブ®」等です。
片面が粘着面になっている透明でとても薄いフィルム材です。
性能面では水蒸気や酸素を透過させることが出来るため、貼付した内側が蒸れにくい構造となるスグレモノです。
適応をチェックすると、出血を伴わない創面、浅い褥瘡(じょくそう…と読みます。一般的には床擦れと称されるものです。)、水疱の保護等と記載されていました。
さすがに適応には乳頸部亀裂とは書いてありませんでしたが、素材がとても薄くて透明であることから、万一亀裂部から血液や滲出液が出てきたら?の場合でも、直ぐに気が付くことが出来ます。(そういう場合は創部の段階として適応外であることが、明らかなので使わない方がいいと思われます。)
私の勤務先には「オブサイト®」がありますが、幅が10cmくらいあるロール状のモノを切って貼るので、赤ちゃんが吸いこんで食べてしまう恐れは無いと思われます。
もちろん、1枚貼りでは薄過ぎて、痛みの緩和が困難なので、同じ大きさに切ったモノを2枚重ねて貼り付けます。
早速アトピー性皮膚炎で乳頸部亀裂のあるお母さんに貼付させていただいたところ、「直母をした瞬間の強烈な痛みの衝撃波が、殆どありません。」と満面の笑みで感謝されました。
余談ですが、以前乳頸部亀裂に対し、「キズパワーパッド®」を使用することについて、ヒトや動物の咬み傷には貼らないという注意書きの解釈判断について、ある読者さんとSOLANINとの間でひと悶着がありました。
個人の責任(=自己判断)で乳頸部亀裂に貼る分については、なんら問題ないのではないかと思われます。
常識の範囲内で患部の観察やケアを怠らなければ、感染の恐れは低いと考えられるからです。
勿論、SOLANINは、乳頸部亀裂へのケアとして、ポリウレタンフィルム・ドレッシング材や「キズパワーパッド®」の使用を強要するつもりは毛頭ありませんので、くれぐれも記事内容を曲解なさらないようにご注意願います。
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コメント
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雨風呂の時からお世話になっています。
私はカップヌードルなどの「熱湯に注意しましょう」とかの注意書きが嫌いなのでsolaninさんの保身じゃ無い書き方が大好きです。そしてわけわからない人が多いから心配です。
今10ヶ月の男の子を母乳で育てています。ゆっくり離乳食だったためまだフル8回。
ここで教わり言い聞かせをして噛まないものの歯があたって痛くキズパワーパッドや乳頭リングにお世話になっています。
お母さんの言葉「直母をした瞬間の強烈な痛みの衝撃波」と言う言葉がピッタリすぎて思わずコメントさせていただきました。
秋から仕事復帰も控えておりドキドキワクワクの育児ですが、これからもお世話になりながらも頑張ります。
変な注意書きをしない時代が来たらもっと書いてもらえる事もあるんじゃないかとも思いながらこれからも過去記事追いかけながら活用させていただきます!
投稿: ドメゆかです | 2013年6月 3日 (月) 07時36分