<ご相談内容>
いつもいつも疑問に思うのは、年配者になればなるほど、私が授乳中だと知れば、「お餅を食べなさい!」と言われたり、実際に持って来られることです。
でも、大抵の助産師さんは、「お餅は食べたらダメよ!乳腺炎になっちゃうよ!」と、キツく戒められます。
お餅を食べたら、確かに乳房は張ります。
(もちろん、乳腺炎が怖いので、食べるとしても1週間に小さいのを1個食べるかどうかというレベルですが、今のトコロ、乳腺炎になったことはありません。)
そして、いつもよりも沢山おっぱいが出るような印象があります。
これはどう考えたらいいのでしょうか?
<SOLANINの回答>
ご出産された方の恐らく90%以上のお母さんは身内の年配者(いわゆるおばあちゃん世代)から、確信を持った口調で「お餅を食べると、おっぱいが張って、沢山出るようになるから是非とも食べなさい。」とアドバイスされたり、入院中や退院後にお見舞い品として、大福餅や餡ころ等を受け取ってしまった経験がおありではないでしょうか?
(お断りしたくても、角が立つから受け取らざるを得ないという状況もあると思います。)
ちなみに私もあります。
「おっぱい=お餅」という概念は、ある種の習俗的な言い伝えなのですね。
お餅は本来はハレの日(お正月や今風に言えば重要なイベントのある日)の有り難くお目出度い日の食べ物で、ケの日(つまり普段の日)に、口にできるような食べ物ではなかったこと。
現在でも北陸地方や名古屋方面では新築の上棟式や婚礼の日に古式ゆかしく屋根に上がってお餅を撒く地域もあると聞きます。
かつての日本の国の庶民は、驚くほど質素なお食事しか食べられなかったこと。
産後の肥立ちが悪くて、体調を崩したり死亡する産褥婦が少なからず居たこと。
食料が配給制で、食うや食わずの時代が今から数十年前にあり、それを経験された年配者が現存され、一種の語り部になっていらっしゃること。
もしかしたら、食うや食わずの時代だったら、お餅を食べても乳腺炎になる方が実際に稀だったのかもしれません。
せめて産褥期はお餅でも食べさせてあげて、お産を労ってあげようという思いやりの気持ちがこもっていること。
お餅は豊かさの象徴でもあったこと。
等々の理由があってのことです。 でも、現代は飽食の時代、グルメの時代でもあります。
今風の食生活から鑑みれば、お餅のようにカロリーがハイパーなものを常態的に口にすれば、乳腺炎への危険水域に自ら近寄っているようなものです。
食べれば乳房は張りますから。
でも、今風の食生活を送っていらしゃるお母さんにとっては、乳房が張る=おっぱいが沢山出る・・・以前に乳汁がドロドロになりますからね。
もちろん、人によっては1回食べていきなりドカンということも充分にあります。
そういうお母さんたちにこれまで大勢遭遇してきた者が言うのですから、間違いないと思います。
反対に、今風の食生活なのに、お餅を胸やけするくらい常食されても、無事に過ごされるお母さんもいらっしゃるのも、また事実。
恐らくそれは、身体的(乳頭・乳輪の形態が赤ちゃんに咥え易い形だったとか、乳管が太いとか、分泌過多傾向ではないとか・・・)及び赤ちゃん的(いつもガッツリ間隔を空け過ぎないように催促してくれたり、飲み方の技巧が超絶的テクニシャンであり、尚且つ、おっぱいの味が不味くなっても不問に付するタイプとか・・・)というような幸運な条件がすべて揃っている母子のカップルなのではないかと推察します。
そういうこういうが重なり、年配者の善意としての「おっぱい=お餅」の概念が、現代にまで残っているのでしょうね。
今後の人間関係に支障をきたすといけませんし、乳腺炎にだけはなりたくないという想いもあるでしょうから、年配者の仰ることを頭ごなしに否定するのではなく、お餅に対する捉え方の世代間ギャップというものがあるということを認識してくださいね。
その上で、やんわりと説明するとか、華麗にスル―される等、今後もトラブル無しで赤ちゃんに美味しいおっぱいをあげるための対処をしてくださいね。